本当に危険なのは命にかかわる 合併症 です。高尿酸血症や痛風を放置しておいたり、治療を勝手に中断したりすると、重大な生活習慣病を合併する危険性が高くなります。以下に代表的な合併症を紹介します。
合併症 痛風治療の真の目的は合併症を予防すること
痛風・高尿酸血症というと、どうしても激痛発作にばかり関心が集まりがちですが、医師の指導を守って薬物療法を続ければ、発作の痛みは改善されますし、発作そのものも起こさないですむようになります。
どんなに発作時の痛みが強いといっても、それによってショック死するような性質のものではありません。しかし、高尿酸血症や痛風を放置しておいたり、治療を勝手に中断したりすると、重大な生活習慣病を合併する危険性が高くなります。
なかには心臓病や脳卒中など、命にかかわるものもあります。痛風・高尿酸血症の治療の本当のねらいは、実は危険な合併症の予防にあるのです。痛風・高尿酸血症に合併しやすい主な病気は次のとおりです。
腎臓病 腎結石や尿路結石ができやすく尿毒症の危険性も
腎臓と尿酸値は密接な関係にあるでも紹介したとおり、体内でつくられる尿酸は腎臓を通じて尿といっしょに排泄されます。しかし、体内の尿酸が増加し、結晶化して腎臓内に蓄積すれば、腎臓の機能は低下します。
そうなれば尿酸値はさらに上昇しますから、腎臓の機能もさらに低下します。尿酸と腎臓はこのように密接な関係にあり、どちらが先であっても、悪循環を引き起こすことになります。
腎臓内に尿酸が蓄積すると、腎結石や尿路結石ができやすくなります。また、腎臓機能が著しく低下すれば腎不全となり、血液のろ過、体内の老廃物の処理ができなくなります。いずれの症状も、放置すると尿毒症を誘発し、命にかかわる場合があります。
症状や個人差によって異なりますが、腎臓に尿酸がたまると、異常なのどの渇きや、夜中に何度も起きてトイレに行く頻尿などの自覚症状がみられます。
高血圧 腎機能の低下から起こるほか、降圧薬が痛風の誘因にも
50代の40%以上、60代の50%以上、70代では60% 以上が高血圧とされています。生活習慣病の中では最も患者数が多い疾患のひとつで、高尿酸血症、痛風患者の多くに合併がみられます。
血圧対策
高血圧は、最高血圧(収縮期血圧、いわゆる上の血圧) が1140mmHG以上、最低血圧(拡張期血圧、下の血圧) が90mmHG以上が診断基準になります。どちらか一方だけでも高血圧と診断されます。痛風に合併して起こる高血圧は、尿酸が腎臓に蓄積することで腎臓の働きが低下して起こる場合もあれば、過食による肥満が原因になっている場合もあります。
また、高血圧の治療に用いられる降圧薬のなかには、尿酸値を上昇させるものがあり、これが痛風発作を誘発するケースもあります。高血圧は、放置すると動脈硬化を促進し、脳卒中や心臓病などの危険性を高めます。
自覚症状がないのも特徴で、「サイレントキラー(沈黙の殺し屋)」などといわれていますから、くれぐれも注意が必要です。〃
高脂血症 発症の原因に痛風おt共通性がある
血液中の脂質の量が異常に多い状態を高脂血症といいます。なかでも特に問題になるのが、コレステロールが多い高コレステロール血症と、中性脂肪が多い高中性脂肪(高トリグリセリド)血症です。
正確な統計はありませんが、高尿酸血症の人の約半数が高脂血症を合併しているとみられます。高尿酸血症の人がなぜ高脂血症を合併しやすいのか、そのメカニズムはまだ解明されていません。
しかし、どちらの症状も、脂肪分の多い食事、過食、肥満、アルコールの飲みすぎなど、共通の危険因子が発症の原因になっていることを考えると、合併しやすいのは当然といえるでしょう。高脂血症は動脈硬化を促進する「主犯格」ですから、進行すると心臓病や脳卒中の危険性を高めます。
糖尿病 痛風を起こす生活は糖尿病も起こしやすい
糖尿病は、血液中のブドウ糖の量が異常に多くなったた状態をいいます。その数億を測ったものが血糖値で、空腹時の測定で126mg/dl以上になると糖尿病と診断されます。
糖尿病の怖いところは病気そのものではなく、全身にさまざまな合併症を引き起こすことです。進行すると、全身の毛細血管や神経組織がボロボロになつて、失明などのほか心臓病や脳卒中の誘因となります。
高尿酸血症がどのようなメカニズムで糖尿病を合併するかは、まだよくわかっていませんが、発症を促進する危険因子は、過食、肥満、アルコールの飲みすぎ、運動不足、高血圧、高脂血症、ストレスなどで、ほぼ1 00% 高尿酸血症と共通しています。
高尿酸血症が進めば、何らかの形で血糖値も上昇させると考えられます。糖尿病は尿酸値を上昇させる腎臓病の原因になるばかりか、動脈硬化を促進する危険因子にもなります。尿酸値とともに血糖値にも十分注意が必要です。
動脈硬化 痛風は動脈硬化の原因となる高血圧などを合併しやすい
動脈硬化は、コレステロールや中性脂肪が動脈の内側の血管壁にこびりつき、動脈の内腔が狭くなったり、硬く変質して弾力性が失われたりする症状です。
糖尿病
動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞といった心臓病、脳出血や脳梗塞などの脳卒中などの重大な病気にかかる危険性が急激に高まります。
動脈硬化を促進させる危険因子には、高血圧、高脂血症、糖尿病、さらには高尿酸血症などの生活習慣病のほか、喫煙、ストレス、運動不足、などの生活習慣があります。高尿酸血症は高脂血症を合併しやすいため、動脈硬化を促進する危険因子となります。
実際、尿酸値が高い人は、正常な人に比べ、心疾患や脳卒中を起こしやすいことが多くのデータで実証されています。
心臓病 動脈硬化の引き金に、狭心症や心筋梗塞が起こる
狭心症や心筋梗塞などの心臓病(虚血性心疾患)は、心臓の冠動脈が動脈硬化を起こすことで発症します。狭心症は血管内部が狭くなることで、心筋梗塞は血管内部が血栓(血液の固まり)で詰まることで発症します。いずれも命にかかわる病気ですから、最大限の注意が必要です。すでにみてきたように、高尿酸血症が進むと、動脈硬化の直接の原因にもなります。
心臓病の基礎知識