痛風発作を起こさないタイプに注意

症状がなく、合併症を招きやすい「無症候性高尿酸血症」

痛風には、発作による痛みや炎症、長期化した場合に現れる痛風結節など、いくつかの特徴的な症状があります。こうした症状により、痛風に関する知識がまったくない人でも、これは何か重大な病気に違いないと気づき、病院に駆け込むきっかけになります。

しかし、尿酸値がかなり高く、いつ痛風発作を起こしてもおかしくない状態にもかかわらず、痛みや炎症などの症状がまったく現れない場合があります。こうした自覚症状がないタイプの高尿酸血症を「無症候性高尿酸血症」といいますが、近年このタイプが増加傾向にあります。高尿酸血症の怖さは、まずなんといっても激痛の痛風発作を引き起こすことです。

無症候性高尿酸血症は、その恐ろしい痛みがないのですから、運がよかったというように考えがちですが、実はまったく逆です。無症候性高尿酸血症はほとんどの場合、気づかないまま放置されることになり、尿酸値が異常に高いままの状態が長期にわたって続くことになります。
そのため病院に行くきっかけがなく、適切な治療を受ける機会を失ったまま、重大な合併症を招くケースが少なくありません。

腎臓への障害に要注意定期健診で尿酸値をチェック

高尿酸血症の人は、痛風発作を起こしやすいということ以外に、脳卒中や心臓病にかかる危険性の高いことが知られています。痛風発作を起こせば、ほとんどの場合病院で治療を受けることになりますから、合併症の恐ろしさを医師から聞き、自分でも健康に気をつけるようになります。

しかし、症状が出ないために気づかないままでいると、重大な合併症の危険性を高めてしまいます。無症候性高尿酸血症の人が最も気をつけなければならないのが、腎臓への障害です。

腎臓は、肝臓と並び称されるほどの「忍耐強い働き者」の臓器で、症状が出たときは障害がかなり進んでいるケースがほとんどです。

腎臓の障害が進めば、それによって他の重大な生活習慣病を合併する危険性も高まりますし、それがまた腎臓の機能低下に拍車をかけます。最悪の場合は、腎不全から尿毒症を起こし、死に至ることもあります。無症候性高尿酸血症を予防し、またその危険性に対処するためにも、定期的に健康診断を受け、尿酸値をチェックすることが重要です。

腎臓は忍耐強い臓器

腎臓は背中側の腰の少し上あたりに、背骨をはさんで左右にひとつずつ並んでいます。大きさはその人の握りこぶしよりちょっと大きめで、そら豆のような形をしています。

愛嬬のある形に似合わず、ちょっとやそっとのことでは音を上げないなかなかの働き者で、肝臓と並んで「沈黙の臓器」と呼ばれて実際、その忍耐強さは並大抵ではなく、何らかの障害で腎機能が半分に低下しても、自覚症状はほとんど現れません。

それだけに、異常に気づいたときには重大な障害を起こしていたなどということになりかねません。定期的に健康診断で腎機能をチェックするなど、十分に注意する必要があります。腎臓の検査は尿検査、血液検査で行います。

痛風発作はこんなところにも起こる

全体の9割が下肢部分だが、肩やひじなどの上肢にも起こる

痛風発作というと足の親指のつけ根とばかり思われがちですが、実は体中のあちこちに起こります。痛風でこんなところは痛まない、という思い込みから、痛風であることを見逃し、治療を受けるのが遅れてしまう場合もあります。

早めに手を打てるように、痛風で痛みの発生する場所を知っておきましょう。初発の痛風発作で最も多いのは、やはりひざから下の下肢部分で、全体の90%を占めます。なかでも最も多いのが足の親指のつけ根で、全体の70%に上ります。圧倒的に多いのが下肢、それも足の親指のつけ根ということになりますが、痛風発作はそれ以外の肩やひじ、手の指などの上肢部分にも起こります。

下肢部分でも、ひざやアキレス腱、くるぶし、足の甲、かかとなどに発生することもあります。足の親指のつけ根以外の場所にも痛風の痛みが起こりうるということを頭の中に入れ、早めに医師の診断を受けるようにします。

90%以上は男性、最近は、女性にも増加の傾向が

痛風は圧倒的に男性が多いのも大きな特徴で、患者全体の90%以上を占めています。発症率にこれほど男女差のある代謝性の病気はほかにありません。
原因としては、男性のほうが女性より尿酸の排泄量が少ないということが考えられています。女性は閉経を迎えると、体内の尿酸量が増加しますが、それでも総量は男性より少ないのが普通です。ただ、最近は女性の発症も増加の傾向にありますから、油断はできません。

慢性化して痛風結節を起こすと体の中に尿酸のコブができる

たびたび痛風発作が起こっても治療をせずに放っておくと痛みが慢性化するばかりか関節が変形したり、動かなくなったしまったりする危険性もあります。
慢性の痛風に多く見られるのが「痛風結節」です。これは簡単にいえば「炭酸のコブ」のように膨らんでくる症状です。
痛風結節が出やすいのは耳介やひじ、手の甲、手の指の関節、あご、アキレス腱、くるぶし、手の甲、かかとなど、比較的体温の低い部分です。
結節は、最初のうちはやわらかく日数がたつにつれて硬くとごつごつした状態に変わってきます。
痛みはなく炎症を起こしたりもしませんが、重症化すると、尿酸結晶の固まりが皮膚を破って出てきてしまうことも珍しくありません。

痛風の発作は尿酸値の上昇が原因で起こる

尿酸は一定の量以上に増加すると結晶化する

尿酸が増えると、なぜ痛風発作が起こるのでしょうか。尿酸が代謝に伴ってできる老廃物だとしても、それだけでは痛風の激痛発作に結びつきません。

痛風発作のメカニズムを理解するには、尿酸のいくつかの特性を知る必要があります。尿酸は、ナトリウムと結合して「尿酸塩」という物質を形成し、血液中に存在しています。

正常範囲内の量なら血液に溶けた液体の状態で、固体になることはありません。ところが、体内で過剰に尿酸がつくられたり、尿酸をうまく体外に排出できない場合、体内の尿酸の量は増加します。尿酸はもともと血液に溶けにくい性質があり、一定の量以上に増加すると、結晶化します。

結晶化した尿酸は関節部などに少しずつたまっていきほす。やっかいなのが、この尿酸の結晶です。顕微鏡でみると白くキラキラと輝いており、雪の結晶のように美しいものですが、その形状は鋭く、針のように尖っています。
といっても、これが関節部を刺激して痛みを発生させるわけではありません。痛風発作の激痛には、尿酸とともに白血球が主役級の役割を果たします。

尿酸塩結晶を撃退するため白血球が攻撃を始める

血液中の尿酸が増え続ければ、尿酸塩結晶の関節部への沈着もどんどん進みます。その結果、一部の結晶が関節部に付着しきれなくなり、関節と関節の間の隙間(関節腔)にはがれ落ちます。そもそも結晶は体にとって異物ですから、ほうっておくわけにはいきません。一部がはがれ落ちることで体の防御システムが働き、異物撃退のため、白血球が出動することになります。

白血球は、リンパ球や単球(血管外へ出るとマクロファージになる)などからできていて、体内に侵入してきた柵菌などの異物を食べたり、抗体をつくったりします。体を侵入から守る「免疫」の役割を担っているわけです。

それだけに白血球の力は相当なもので、異物に対しては容赦のない攻撃を仕掛けます。しかし、一方の尿酸塩結晶も負けてはいません。その針のような形で激しく応戦します。この両者の激烈な戦いこそが、痛風の痛みの原因だったのです。

患部が⊥よ赤く腫れ上がるのも、両者の戟いの末の炎症にほかなりません。こうして、白血球と尿酸塩結晶の戦いが激しければ激しいほど、痛風作の痛みも激しく、戦いが長引けば長引くほど、痛みも長引くことになります。

激戦が終われば痛みは嘘のように消失してしまう

戦いはいつか終わります。関節腔内にはがれ落ちた尿酸塩結晶は、激戦の末に白血球に食べられて消滅します。戟いが終われば、痛みも消えます。

あまりの痛さに身動きもできず、何日も寝たきり状態だったのに、ある日、嘘のように痛みがなくなってしまうのは、まさに戦いが終わったという証拠なのです。

しかし、安心はできません。痛風は、ほうっておくと多くの場合再発します。これは、いったん戦いが終わっても、関節部の尿酸塩結晶がすべてなくなったわけではなく、また新たに生成されたりもするからです。高尿酸血症を治さない限り、関節部への結晶の沈着は続きます。高尿酸血症の人は尿酸塩結晶の生成をくい止めるために、生活改善、必要なら薬物療法によって尿酸値をコントロールすることが大切です。

痛風を引き起こす「尿酸」とプリン体の正体

どちらも代謝でできる廃棄物でプリン体は尿酸の原料になる

痛風は高尿酸血症が続くことで起こりますが、「尿酸」とは、そもそも何なのでしょうか。また、痛風が話題になるとき、必ずといっていいほど耳にする「プリン体」とはどんなもので、尿酸とはどんな関係にあるのでしょうか。

簡単にいうと、尿酸もプリン体も古い細胞が新しく生まれ変わるときにできる廃棄物のようなもので、尿酸をつくる原料になるのがプリン体です。

私たちの体をつくつている約60兆個の細胞は、常に古いものから新しいものへと生まれ変わっています。その際、細胞は内部の老廃物を分解して排出し、新たに栄養分を分解・合成して補充します。こうした細胞レベルの分解・合成・再生などの活動を総称して、「代謝」といいます。

尿酸の原料になるプリン体は、細胞の核の中に存在している物質です。

核内には遺伝子を形づくる核酸という物質があり、これが代謝によって分解されると、プリン体がつくり出されます。つまり、プリン体は役目を終えた核酸の残骸ということができます。こうしてできたプリン体は体が出す廃棄物と同じですから、体外へ排出しなければなりません。そのため肝臓にいったん集められ、化学処理されます。こうしてできるのが尿酸はいせつで、最終的に尿や便から体外に排泄されます。

プリン体はエネルギーの燃えかす

プリン体はまた、ATP(アデノシン三リン酸) というエネルギーの発生源になる物質の中にも含まれています。ATPは、手足などの筋肉を動かすのはもちろん、脳や心臓などの臓器をはじめ、全身の器官や組織を働かせるのに不可欠なエネルギー源です。

ATPは、体が代謝活動を行うときにエネルギー源として使われ、分解されます。その分解の過程でできるエネルギーの燃えカスのようなものもプリン体です。これも同じように肝臓で分解されて尿酸に合成され、体外へ排泄されます。

食品から入るプリン体は10~15%

プリン体は体内でつくられるばかりではありません。食物や飲み物などにも含まれていて、物を食べるたびに体内に入ってきます。プリン体は細胞の核の中に存在していますから、動物、植物を問わず、ほとんどの食品の中に含まれています。

なかでも特に多く含まれる食品を「高プリン食」と呼んでいます。尿酸値の高い人は、多くとりすぎないように注意が必要です。しかし、高プリン食は完全に絶たなければなどと、必要以上に神経質になることはありません。プリン体の全体量は、体内でつくられるものが85~90%を占めるに対し、食べ物から入ってくるものは10~15% 程度にすぎないからです。こうしたことを知ったうえで、食生活の改善に取り組むことが必要です。

体内の尿酸の量は一定に保たれている

尿酸は体内で常につくられていて、その量は成人で1日に約750mgとされています。私たちの体は、体内にできた尿酸を分解して処理できないため、通常は酵素の働きでうまくコントロールされています。

体内には常に1200mgほどの尿酸がキープされていて、新しくつくられる分とほぼ同量の尿酸が体外に排出されていきます。尿酸は、職場や家庭で毎日出されるゴミと同じように、日々新たに生み出される一方で、どんどん廃棄されていくようにしくみができ上がっているのです。

痛風は予備群を含めると600万人にもなる

患者数は60万人以上、若者にも急増中

痛風・高尿酸血症の患者・予備軍が急激に増加しています。厚生労働省の調査では、現在の日本人の痛風患者は約16万人ほどとされています。

しかし、これは実態とは大きくかけ離れており、正確な統計はないものの、実際の痛風患者数は30~60万人以上、尿酸値の高い高尿酸血症の人(痛風予備軍)まで含めると、その数は600万人前後にも上るとみられています。

さらに驚くべきは、患者・予備軍の若年齢化です。かつては痛風というと、40代、50代のでっぷり太ったおじさんがなるものというイメージが強かったのですが、最近では若年齢化が急激に進み、初めて痛風になる年齢ではなんと30代が最も多くなっています。
しかも、20代の患者も増え続けており、痛風は若いうちから気をつけなければならない病気となっています。「痛風はおじさんの病気だから関係ない」などと安心してはいられないのです。

歴史上の有名人たちは痛風に泣かされていた

痛風はその昔、王侯貴族などの権力者や裕福な特権階級の人たちがかかる病気として有名でした。そのため「帝王病」とか「ぜいたく病」などと呼ばれ、庶民にはまったくといっていいほど無縁の病気でした。

いかに特権階級であっても、昔は原因もわからず、ただひたすら痛みに耐えるしかありませんでした。それどころか、腎臓に重大な障害を起こし、腎不全から尿毒症を発症して死に至るなど、命にかかわる重い病気と恐れられていたのです。

痛風の危険因子は現代の生活習慣、食習慣そのもの

かつての帝王病が、今なぜこんなに増え、一般化したのでしょうか。実は日本でも、発症するのはもっばら特権階級だったため、痛風はきわめて珍しい病気でした。

それが、高度経済成長が始まる1960年代以降、急激に増加してきたわけです。理由はいうまでもなく、かつてのぜいたくが、現代人にとってはごく普通の生活になってしまったことです。

美食、過食、運動不足、それらが原因で起こる肥満、さらにはアルコールの飲みすぎ、一方では過剰な労働による強いストレスなど、痛風・高尿酸血症を引き起こす危険因子は現代人の日常生活のなかにあふれています。痛風は、もはやだれがかかってもおかしくない「現代病」なのです。

足の親指のつけ根に突然「激痛」が襲う

痛むのは、通常1ヶ所のみ

痛風という病気は、病名にも「痛」の文字が入っているように、激しい痛みが特徴の病気です。「風が吹いても痛い」が病名の由来といわれますから、その痛さは並大抵ではありません。

ひどい場合は歩くことができないどころか、うずくまったまま、身動きができずに寝込んでしまうこともあるほどです。痛みが発生する場所は足の親指のつけ根が最も多く、全体の約70%を占めます。

ひどくなると患部は赤くま腫れあがり、靴をはくこともできなくなります。足の親指のつけ根以外にも、足のけん甲やかかと、くるぶし、アキレス腱、ひざなどに発生する場合があります。下半身ばかりではなく、まれではありますが手の指や甲、ひじなどに痛みが出るケースもあります。

痛みが発生する場所はいろいろあっても、痛むのは通常1ヶ所だけで、同時に複数ヶ所が痛むことはほとんどありません。これは痛風の症状の特徴のひとつで、他の紛らわしい病気との誤診を避けるうえでも大切なので記憶にとどめておきましょう。

尿酸が増えた状態がしばらく続くと発症する

医学が発達した現代では、痛風という病気そのものが命にかかわることはまずありません。健康診断で尿酸値が高かったといっても、それほど神経質になる必要はないわけです。

ただし、注意すべきなのは、ほうっておくと、激痛をくり返すばかりか、重大な生活習慣病を引き起こす原因にもなるということです。
痛風発作は血液中の尿酸の量が増え、ある限界を超えると起こります。尿酸が異常に高い状態を「高尿酸血症」と呼びますが、この数値になれば必ず起こるというわけではなく、普通は尿酸値の高い状態が何年か続いた後に発症します。

高尿酸血症が長く続くと、あふれ尿酸が腎臓や足の指などの関節部にたまり、結晶化します。関節部に結晶化して付着した尿酸は体にとっては異物ですから、これを排除しようとして白血球が出動し、攻撃を加えます。

この両者の戦いが痛風発作(痛風関節炎) の痛みの原因になります。尿酸値の上昇は痛風関節炎のほか、腎臓の障害や痛風結節、最終的には命にかかわる重大な合併症の原因になります。日常的にしっかりと自己コントロールすることが大切です。

激痛が続き何日かして嘘のように痛みが消える

痛風の痛みの持続時間は一定ではありません。が、多くの場合、発作を起こしてから24時間は、痛みが強くなったり持続したりする要警戒の時間帯です。
その後、痛みの症状は徐々にやわらいでいくのが普通で、早くて2~3 日、長い人でも1 週間~10日ほどすると、ウソのように痛みが消えてしまうのが一般的な傾向です。

しかも、初期のころは、痛風発作が起こるのはせいぜい年に2~3 回ほどで、発作が終わるとすっかり忘れている人がほとんどです。のどもと過ぎれば…です。
しかし、これを放置しておくと、次の発作までの期間がだんだん短くなり、発作の回数が増えていくのが通常のパターンです。再発の頻度が高くなるのと同時に、痛みも含めて病気そのものが重症化してしまいます。

地道な生活習慣の改善で尿酸値を下げ、合併症を予防する

必要以上に恐れず、定期健診で尿酸値をチェック

ある日突然、何の前ぶれもなく、激しい痛みが襲ってくる。しかも、治療をしないでほうっておくと、命にかかわる重大な合併症を引き起こす。聞いてだけで、恐ろしくなります。

痛風にだけはなりたくない、尿酸値が高くなったらどうしよう…そんな気持ちにとらわれてしまいます。しかし、必要以上に恐れることはありません。

痛風・高尿酸血症は、体内の尿酸の量の増加によって起こるなど、発症のメカニズムも解明されています。がんやHIV(エイズ)のように、確実な治療法がまだ十分には解明されていない病気ではないからです。根治させる薬はまだありませんが、原因となる尿酸値を正常値まで下げる薬はすでに開発されています。薬物療法を行いながら、生活習慣の改善を実践していけば、十分に予防・改善できる病気なのです。

痛風・高尿酸血症の治療に使われる薬について

そのためにも第一に必要なのは、自分の尿酸値がどれくらいなのか、しっかり把握しておくことです。もし、定期的な健康診断を行っていないのであれば、最低でも年に1回は受けるようにし、他の検査結果も含め、自分の尿酸値のレベルを常にチェックするようにしましょう。
多くのサラリーマンは会社で定期検診を実施しますが、自営業の方の場合、これを行わない人も多いので注意が必要です。

食事を中心にした生活改善が尿酸値コントロールの基本

健康診断で、尿酸値が高めと指摘されても、あわてることはありません。そのときの数値によって対応は異なりますが、医師の指導を受けながら、冷静に対処してください。
痛風・高尿酸血症の治療は、食事療法を中心にした「生活改善療法」と、薬を服用して尿渡値を正常範囲内にコントロールしながら薬物療法を行うのが中心です。

まず、生活改善療法ですが、これは尿酸値が高いとわかったらすぐに開始するのはもちろん、尿酸値の高低にかかわらず、健康を維持・増進するために常に心がけたいものです。

現代人の生活習慣は尿酸値を上昇させる危険因子であふれています。自分ではごく普通に生活しているつもりでも、気づかないうちに尿酸値を上昇させてしまっていることがありますから、まずは生活習慣全般をじっくり見直すことが必要になります。正常範囲を多少超えた程度の尿酸値なら、生活改善を行うことで正常範囲内に戻すことは決して難しくありません。生活改善こそ痛風・高尿酸血症を治療する基本と心得ましょう。

生活改善で尿酸倍が正常になっても、油断は禁物です。継続していかなければ、尿酸値はすぐに上昇に転じます。尿酸値を正常範囲内にコントロールするためにも、他の生活習慣病を防ぐためにも、生活改善を続けることが大事です。

薬の投薬がはじまっても生活習慣の改善は地道に続ける

薬物療法は医師の判断で開始しますが、主に尿酸値が異常に高く、このままでは痛風発作が避けられない場合や、生活改善をしても当分は尿酸値の低下が困難と思われる場合に行われます。

薬物療法は多くの場合、いったん始めると長期間におよびます。医師の指示を守って、根気強く続けることが大切になります。薬物療法を始めると、尿酸値は簡単に下がるため、生活改善を怠る、やめてしまう人が出てきますが、これは禁物。生活改善はあくまで治療の前提です。痛風治療は、長い目で根気よく取り組む姿勢が不可欠です。

腎臓、脳、心臓の障害のほか、糖尿病などの合併症

激痛の改善が最優先だが本当に

痛風という病気の特徴は、なんといっても発作を起こしたときの激痛です。「風が吹いても痛い」というのが病名の由来といわれるほどですから、その痛さはすさまじいばかりで、体験者によってさまざまな表現で伝えられています。

なかでも多いのが、足の指が骨折したと思ったというものです。それまで経験したことのない痛さがいきなり襲ってくるため、考えられる最悪の事態として瞬間的に骨折を思い浮かべるようです。

そのほかでは、鉄の棒で殴られたよう、矢で射抜かれたらこんな痛みなのでは、生まれて初めて脂汗をかいた、車の運転中だったので事故を起こすのではないかと焦った、痛みが上まできたら命はないと思ったなどの体験談がよく聞かれます。

表現こそ違え、痛みの実感はよく伝わってきます。これほどの痛みを伴う病気ですから、痛風というと痛みだけが問題の病気と考えられがちです。しかし、痛風はそれほど簡単な病気ではありません。もちろん、耐えがたい痛みを早急に改善するのは痛風治療の最優先の課題になりますが、本当に怖いのは、痛風・高尿酸血症に伴って起こるさまざまな合併症です。

高血圧、高脂血症などが原因のメタボリックシンドローム

痛風・高尿酸血症の合併症には、命にかかわる重大なものがありますが、その前に気をつけなければならないのは、肥満や高血圧、高脂血症、高血糖(糖尿病)など、重大な生活習慣病を招くさまざまな病気です。意外に思う人もあるかもしれませんが、こうした状態も尿酸値の上昇に伴って起こることがわかっており、痛風・高尿酸血症の「立派な」合併症といえるのです。これらの症状は、最近注目されているメタポリックシンドロームの危険因子でもありますから、特に注意が必要です。

腎臓の機能低下や結石、心臓や脳の血管障害も合併症

高尿酸血症が引き起こす重大な合併症として、まず挙げなければならないのは腎臓病です。体内でつくられる尿酸のほとんどはいは腎臓に運ばれて尿といっしょに排せつ泄されますから、尿酸が異常に増えると、腎臓に障害が起きて、機能が低下します。進行すると腎不全を起こし、命にかかわる場合もあります。また、尿酸の異常な増加は、腎臓や尿路に結石ができる危険性を高くします。
そのほかでは、動脈硬化が主な原因で起こる狭心症や心筋梗塞などの心臓病、脳出血や脳梗塞などの脳卒中など、心臓と脳の血管障害があります。
尿酸値の高い人は、高コレステロール血症や高血圧など、動脈硬化の原因になる危険因子をもっている場合が非常に多くなっています。メタポリックシンドロームとも関連しますが、注意が必要です。

メタボは心臓病の危険性を30倍以上も高める

メタポリツクシンドロームというのは、肥満(内臓脂肪型肥満)に加えて高血圧、高脂血症、高血糖などの危険因子が複数重なると、心臓病や脳卒中などの重大な生活習慣病になる危険性が高くなるという新しい疾患概念です。

いま、中年男性の2人に1 人、女性の5人に1人はその危険性があるとされています。実際、メタポリツクシンドロームの人は、狭心症や心筋梗塞などの疾患にかかる危険性が30倍以上に上がるというデータもあります。

高尿酸血症そのものはメタポリツクシンドロームの危険因子ではありませんが、危険因子である高血圧、高脂血症、高血糖を合併する原因になります。メタポリックシンドロームを防ぐためにも、尿酸値を正常に保ち、これらの合併症を防ぐことが大切です。

ただ痛いだけの痛風だと思ったら大間違い

痛風は知っているけれど「尿酸値って何?」という人が多い

痛風と聞くと、多くの人が「贅沢病ですごく痛いんでしょ?」などとイメージを持っています。誤解が多いとはいえ、痛風という病気の存在は広く知られているようです。

一方、尿酸値について聞かれると、多くの人が首をかしげてしまいます。血圧や血糖値についてはよく知っているし、気にしているけど、尿酸値なんて聞いたことがないとか、尿の酸性度を表したもの? などという珍回答を耳にすることもあります。

実は、この尿酸値が異常に高くなった状態である「高尿酸血症」こそが、痛風を引き起こす要因となるのです。たとえば、血糖値の上昇が糖尿病を引き起こすことは、多くの人が認識するようになってきています。

日本人の新しい国民病といわれるほど患者数の多い糖尿病には、それだけ注目も集まり、認知度も高まっているわけです。しかし、痛風・高尿酸血症に関しては、同じように患者や予備軍が急増しているにもかかわらず、まだそこまでの認識の広がりはありません。

それだけに、痛風に関する予備知識がまったくないまま発作を起こす人も多く、そのあまりの痛さに七転八倒することになります。しかも、突然の激痛の原因がまったくわからないため強い、不安を感じ、精神的にパニック状態に陥ってしまうケースもあります。

症状が出ない高尿酸血症は現代人の生活習慣が誘因に

痛風発作は、ある日突然起こります。その原因になるのが体内の尿酸値の上昇ですが、尿酸値が痛風発作を起こす危険なレベルまで上がっても、自覚症状はほとんどありません。

痛風・高尿酸血症に関する知識がなかったり、定期的に健康診断を受けていなかったりすると、知らないうちにどんどん状態を悪化させてしまう危険性が高くなります。さらに問題なのは、尿酸値を上昇させるさまざまな危険因子が、現代人の生活習慣のなかにあふれていることです。

この点に関しては後で詳しく紹介しますが、たとえば、肥満です。肥満は周知のとおり、あらゆる生活習慣病の温床になります。痛風・高尿酸血症も例外ではなく、肥満の人の尿酸値は高い傾向があります。肥満と関連しますが、過食も尿酸値を上昇させる大きな原因になります。痛風は昔、ぜいたく病、帝王病などと呼ばれ、王侯貴族や一部の特権階級の人たちの間に多くみられました。

これは富と権力を独占した少数の人たちが美食にふけり、満腹するまで食べていたからにほかなりません。それ以外の人々は、痛風になるほど十分な食事はとれなかったわけです。現代人の食事内容は、かつての特権階級の人たちと同じくらい豊かになりました。このような食事を毎日続けていれば、だれもが尿酸値を上昇させ、痛風発作を起こす危険性があります。

酒、ストレスにも要注意、検診での早期発見が大事

このほか、アルコールの飲みすぎ、過重なストレスなども尿酸値を上昇させる大きな原因になります。仕事一筋でストレスをため込み、連日のようにつき合い酒という人も多いことでしょう。

ごく普通にみられる現代人の生活習慣が尿酸値を上昇させ、痛風を招くのです。突然の激痛発作を未然に防ぐには、痛風・高尿酸血症の基礎知識をしっかり身につけ、健康診断を受けて定期的に尿酸値をチェックすると同時に、健康的な生活習慣を確立することが大切です。