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動脈硬化と高脂血症の治療

まずは食事療法と運動療法

高脂血症(脂質異常症)になる原因には動脈硬化があります。合併症の有無やその病状にもよるのですが、動脈硬化を改善するには、食事療法と運動療法を中心とした一般療法が行われます。3ヶ月、6カ月、または1年ほどかけて一般療法を行いますが、もし良好な効果が得られなかったときには、薬物療法が行われます。ただ、一般療法をやめてしまうわけではなく、薬物療法も併用して行うことになります。

動脈硬化が進行している場合、また動脈硬化の危険因子を多く持っている人の場合には、薬物療法を早めに併用することになります。特に、コレステロールや中性脂肪の数値が低くても、合併症などの危険因子が多い場合は、積極的に薬物療法を行います。

動脈硬化になっていなくても、コレステロールや中性脂肪の数値が高い場合には、薬物療法を行う必要があります。

高脂血症の薬物療法

高脂血症(脂質異常症)の治療を行う薬物療法では、使用する薬の種類は高脂血症のタイプによって異なります。薬物療法を開始するとき、どのタイプの薬を使用するかは、その人の高脂血症のタイプのほか、年齢、性別、症状の程度や合併症の有無も考慮されます。また、血清脂質の治療目標値も変わってきます。

総コレステロール値が高い場合(タイプⅡa)や中性脂肪値が高い場合(タイプⅠ、Ⅳ、Ⅴ)は、それぞれの値を下げるタイプの薬を用い、どちらの値も高い場合(タイプⅡb、Ⅲ)には、両方に効果が見込める薬を用います。

治療に使われる薬には、細胞への脂質の吸収を防ぐための薬や、肝臓などでの脂質の合成を抑えるための薬、肝臓からの排泄を促進させる薬があります。

薬物療法がうまくいくかどうかは、薬の効き目だけでなく、患者の養生の仕方にもかかっています。調子がよいからと勝手に薬の服用をやめてしまうと、数値が急激に上がったり、元に戻ったり、以前より高くなってしまったりなど、リバウンドする危険性があります。

動脈硬化や高脂血症の薬物療法は、狭心症や心筋梗塞などの病気を予防する目的で行われるので、医師の指示に従い、血清脂質の検査を定期的に受けながら、薬と付き合っていかなくてはなりません。

動脈硬化とはどんな状態か

血液中の脂質が異常に増えた状態である高脂血症(脂質異常症)は、動脈を硬化させる原因になります。血清脂質の異常を早期に発見することが大切ですが、では、動脈硬化とはどういったものなのでしょうか。

動脈の構造

人間の体内には動脈と静脈という血管が張り巡らされています。動脈は心臓から送り出される血液を全身に運ぶ経路で、静脈は末梢組織から心臓へと戻ってくる経路です。動脈には心臓から送られた酸素や栄養を全身の組織へと運ぶ血液(動脈血)が流れていますが、この動脈血には高い圧力がかかっていて、動脈自体が弾力のある筋肉の管になっています。

動脈は、血管径の大きさと中膜の弾性線維の量から、大動脈などの大型動脈、冠動脈などの中型動脈、直径2ミリ以下で臓器の中にある小型動脈に分けられます。そして、血管の内側から順に、内皮細胞、内膜、内弾性板、中膜、外弾性板、外膜で構成されています。

動脈硬化の状態は

動脈硬化とは、文字どおり、動脈の壁が硬く変化してしまったことをいいます。血管の壁が厚くなり、血管そのものの弾力が無くなってしまい、血管がもろくなった状態です。

初期には症状が現れず、動脈の硬化の程度が進んで悪化してくると肩こりや頭重を感じるようになり、胸が痛んだりするようになります。

動脈硬化が起こる原因は、動脈の場所によって異なるのですが、高脂血症(脂質異常症)が原因となって起こる動脈硬化を粥状(じゅくじょう)硬化といいます。この粥状硬化は、心筋梗塞や脳梗塞といった恐ろしい病気を引き起こします。胸部大動脈や冠動脈などの大型・中型の動脈に起こり、血管にアテロームと呼ばれる瘤(こぶ)をつくります。

粥状硬化のほかにも、石灰化を起こし糖尿病の人に多く見られる中膜硬化や、高血圧と関係が強い細小動脈硬化があります。

動脈硬化が起こす成人病

動脈硬化は全身の動脈で起こり、さまざまな成人病の引き金となります。動脈硬化が大きな原因のひとつだと考えられている成人病には、狭心症や心筋梗塞、脳出血や脳梗塞、高血圧症、糖尿病、腎臓病などがあります。

動脈硬化にならないようにするには、食事や運動といった日常生活の改善が必要になります。

血清脂質は加齢とともに増加する

男性は中年になると血清脂質が増加

血清脂質は普通、年齢を重ねるに連れて増加してくるものですが、男性の場合は特に、30歳を過ぎた頃から急に中性脂肪やコレステロールが増えてきます。そして、60歳ぐらいまでの間に、血清脂質は20~30mg/dlも増加します。その後70歳ぐらいには減少していくことがわかっています。

また、中年の男性が太ってきた時は、高コレステロール血症や高トリグリセライド血症になる可能性があります。このことから、男性は、定期的に血清脂質や血圧の検査を受けるとよいでしょう。それから、中高年を迎えた男性は、動脈硬化や狭心症、心筋梗塞などの病気の危険性が高まりますから、日頃から血清脂質の変動に注意しておき、食事や生活習慣にも気をつけましょう。

女性は閉経後に血清脂質が増加

女性の場合、普通、思春期から閉経期ぐらいまでは、男性と比べると血清総コレステロール値や血清トリグリセライド値は低く、血清HDLコレステロール値が高くなるので、動脈硬化たや高脂血症(脂質異常症)になる割合は低くなります。

ただ、その後、閉経期を迎える50歳前後になると、エストロゲンという女性ホルモンの働きが低下するため、急に血清コレステロール値が高くなります。また、中性脂肪も増えるので、高トリグリセライド血症にもなりやすくなってくるのです。

妊娠した女性がコレステロールの値が高くなることがありますが、これはホルモンのアンバランスによる一時的なものです。しかし、異常に高い数値が続く場合には、治療しなければならない可能性があります。
さまざまな不調があらわれる更年期障害(症状・原因・治療)

血管の老化は生活習慣によって差が出る

人間の体の老化の速度が特に早いのが血管です。血管の老化は、脳や心臓にも影響を及ぼし、老化を早めます。このように、老化現象というのは、細胞が活発に活動している脳、心臓、血管から早く始まります。

私たちの血管の老化は、母親の胎内にいる頃から既に始まっています。誕生後にもそれはずっと続き、たいてい中年以降にその影響が大きく現れることになります。

ただ、血管の老化の進行のしかたや程度は、個人個人の食生活や生活習慣に大きく影響されます。老齢の人でも血管が若々しい人もいるし、その逆の人もいます。このことから、人は血管とともに老いるといわれ、血管年齢を若く保つことが健康の秘訣だということがわかります。

血管はもっと若返るを参考にしたい!

高脂血症の原因となるもの

高脂血症は、原因不明や遺伝的な要素によって起こる「原発性高脂血症」と、別の病気の影響などによって起こる「続発性(二次性)高脂血症」に分けられます。高脂血症(脂質異常症)が起こる原因には、遺伝的な要因と、別の病気や薬剤の服用によるもの、そして、生活習慣の乱れがあります。

遺伝による「原発性高脂血症」

原発性高脂血症とは、検査をしても原因がはっきりしないのに、コレステロールや中性脂肪の値が高い状態の高脂血症のことをいいます。この場合、遺伝的な体質に原因があるとされています。中には血清脂質やリポたんぱくの合成、代謝に障害があって遺伝性ではないケースもありますが、ひとつの家族に高脂血症の発症が特異的に同じようにみられる遺伝性のあるケースが多くなっています。

次に挙げるのは原発性高脂血症のタイプです。

  1. 原発性高カイロミクロン血症
  2. 家族性Ⅲ型高脂血症
  3. 家族性複合型高脂血症
  4. 内因性高トリグリセライド血症

家族性の高脂血症の場合、LDL受容体が遺伝的に不足しているためにLDLコレステロールが血液中にいつまでも停滞してしまい、血清コレステロール値が300~400mg/dlぐらいに上がっています。

別の病気などによる「続発性高脂血症」

続発性(二次性)高脂血症とは、肝臓や腎臓などの病気によって、二次的に起こる脂質代謝の異常をいいます。そのほか続発性高脂血症を引き起こす病気には、糖尿病や肥満などの代謝異常、甲状腺機能障害や下垂機能障害など内分泌系の病気、自己免疫疾患などがあります。また、こういった病気以外にも、利尿剤やステロイドホルモン剤などの薬の服用、脂質の多い食事やアルコールの摂り過ぎも続発性高脂血症の原因となります。

現在健康だとしても、近親者に高脂血症の人がいる場合には、将来、家族性の高脂血症になる可能性があるので、食習慣、生活習慣に気をつけなければなりません。

食事、生活習慣に注意する

高脂血症では、普段の食事のしかたや生活習慣が原因となるケースが多くあります。脂肪分の多い食事はもちろん、全体量の食べ過ぎ、カロリーの高い食事やアルコールの飲み過ぎなどのエネルギー過多にはじゅうぶん注意しましょう。このタイプの人は肥満であることが多いので、血液中のコレステロール値や中性脂肪値を減らすには、まずは肥満を改善する必要があります。

運動不足によって高脂血症が起こるケースもよくあります。日常生活での運動不足は、体力を衰えさせるだけでなく、コレステロールや中性脂肪を溜め込むことにもつながります。食事で摂取したエネルギーを消費するには、体を動かすのが一番です。運動すると全身の血行が良くなるので、中性脂肪やVLDLの分解が早まり、善玉のHDLが増えます。

食後の高脂血症

食後高脂血症とは

食事をすることによって摂取された油脂(脂質)は、しばらくはカイロミクロンとして血液中に在ります。このカイロミクロンは、リパーゼという酵素によって消化分解され、たいてい3時間くらいで消えていくのですが、それからしばらく時間が経っても消化されずに残ってしまうと、カイロミクロンの消化カスとして「カイロミクロンレムナント」になります。

レムナントというのは残り物というような意味なのですが、これが血液中に残っていることがあり、この状態は「食後高脂血症」といわれます。高脂血症のタイプのうち、カイロミクロンの値が高くなるⅠ型とⅤ型に見受けられる症状です。

血液中に、コレステロールを含んだカイロミクロンレムナントがいつまでも存在していると、マクロファージ(大食細胞)がこれらを取り込んで、動脈の壁にコレステロールが沈着していき、動脈硬化を引き起こすこととなります。

マクロファージは、私たちの体のさまざまな場所に存在している白血球の一種です。血液中の細菌や異物を飲み込んで、血液を正常な状態に保つ大切な働きをしています。

カイロミクロンレムナントはコレステロールを含んだ小粒子ですが、血液の中に5mg/dl以上残っていると、細胞(マクロファージ)が吸収し、コレステロールが動脈の壁に溜まっていきます。

食後高脂血症は、食事から摂取された中性脂肪が、消化酵素の力で十分に消化されないために起こるものです。体質も関係しているようですが、脂質や糖質、アルコールの摂り過ぎも原因となっています。

高脂血症は血液の脂質異常

高脂血症とは

「高脂血症」(脂質異常症)は、血液中に溶けている中性脂肪やコレステロールなどの脂質の値が高く、異常な状態です。これは、脂質や糖質の摂り過ぎが原因となって起こった、血液の脂質異常です。そして、高脂血症の中でも、中性脂肪の値が異常に高い状態を「高トリグリセライド血症」、コレステロールの値が異常に高い状態を「高コレステロール血症」といいます。

高脂血症は、いつの間にか高脂血症になっていて、特に自覚する症状も無く、普段の生活にもほとんど支障がありません。ですから、健康診断の血液検査などで判明することが多く、かなり進行しているケースもあるのです。

高脂血症のタイプは6つ

高脂血症は、脂質(リポたんぱく)の増加の状態により6つのタイプに分けられます。
【タイプⅠ】・・・特にカイロミクロンが増加し、中性脂肪値が非常に高い。
【タイプⅡa】・・・LDLだけが増加していて、中性脂肪値は正常。遺伝性である。
【タイプⅡb】・・・VLDLとLDLが増加し、中性脂肪値が高い。
【タイプⅢ】・・・特にLDLが増加し、コレステロール値と中性脂肪値がどちらも高い。
【タイプⅣ】・・・VLDLが増加していて、中性脂肪値が高い。
【タイプⅤ】・・・カイロミクロンとVLDLが増加し、中性脂肪値が高い。

血液中に中性脂肪が増えすぎの「高トリグリセライド血症」

高脂血症というと、一般によく知られているのは「高コレステロール血症」ですが、もうひとつ、「高トリグリセライド血症」も問題となっています。高トリグリセライド血症は、特に中性脂肪の値が高い状態です。判断基準値は、150mg/dl以上です。高脂血症や動脈硬化を解消するには、コレステロールだけでなく、中性脂肪にも注意が必要だということです。

日本人の男性には、この高トリグリセライド血症の人が近年非常に増えているといわれています。これには、アルコールや肥満が大きく影響しているようです。

血液中にコレステロールが増えすぎの「高コレステロール血症」

「高コレステロール血症」は、高脂血症のうち、特に血清コレステロールの値が高い状態です。判断基準値は、220mg/dl以上となっています。
 ※2007年に改められた基準値では、『高LDLコレステロール血症』・・・LDLコレステロールが140mg/dl以上、『低HDLコレステロール血症』・・・HDLコレステロールが40mg/dl未満とされています。

食生活などが欧米化したため、日本でも高コレステロール血症になる人が増えています。糖尿病を患っている人の中に、特に多く見られます。

エネルギー源となる中性脂肪

中性脂肪とはどんな物質か

中性脂肪は、グリセロール(グリセリン)と3つの脂肪酸が、酸とアルコールが結合して起こる化学反応(エステル結合)を起こした物質です。グリセロールというのは学名であって、一般に物質としての名称では「グリセリン」と呼ばれます。またの名で「トリアシルグリセロール」ともいわれます。このグリセリンは、室温では油状になっています。

中性脂肪は私たちの体の中の脂質のひとつで、食物を通じて体内に取り入れられるものと、肝臓で合成されるものがあります。中性脂肪の働きとしては、寒いときに体が放熱するのを防いで体温を一定に保ったり、皮下に蓄えられた脂質が内臓を外部からの衝撃から守ったりします。

中性脂肪のエネルギー生産量

中性脂肪は容積が小さくて軽く、水を含んでいません。そして、炭水化物やたんぱく質と比べると、単位量当たりのエネルギー生産量が高いという特徴があります。

脂肪細胞内に蓄えられた中性脂肪が化学反応を起こし完全に燃焼すると、1グラム当たりでおよそ9キロカロリーのエネルギーとなります。ですから、例えば、体重が60キログラムの人であれば、脂肪が約9キログラムあって、エネルギーは約8万1千キロカロリー蓄えられていることとなります。

貯蓄用のエネルギー

私たちの体の中の脂質は、中性脂肪として脂肪細胞内に蓄えられています。これらの貯蓄された脂肪は、長時間エネルギーの補給がないときに使われ、緊急時のエネルギー源となります。中性脂肪はエネルギーの貯蓄率が高いので、貯蓄用エネルギーとして最適です。

中性脂肪は、まず、ホルモン感受性リパーゼという酵素の作用によって、遊離脂肪酸とグリセロールに分解されます。この遊離脂肪酸が血液中に放出され、血漿アルブミンと結合します。そして、動脈から全身の細胞へと運ばれ、エネルギーとして使われるのです。

善玉コレステロールと悪玉コレステロールの働き

一般に「善玉コレステロール」といわれているHDLは血管の中のコレステロールを回収する働きをし、「悪玉コレステロール」といわれているLDLはコレステロールを運ぶ働きがあります。

善玉コレステロールの働きは血管内のコレステロールを回収すること

高比重リポたんぱく(HDL)は一般的に善玉コレステロールと呼ばれ、血液中のコレステロールや肝臓で合成され全身の末梢組織の血管の壁に溜まった低比重リポたんぱく(LDL)を回収する働きをしています。

HDLは肝臓で合成されるのですが、そのほかにも、カイロミクロンや超低比重リポたんぱく(VLDL)がLDLに変わるリポたんぱく代謝の過程でつくられます。

体の中にHDLが少ないと、血液の中や血管の壁に溜まったコレステロールがじゅうぶんに回収されずに、血管が狭くなったり、もろくなります。この症状が動脈硬化の始まりで、心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患にかかりやすくなるのです。

アメリカでは、HDLの量が少なくLDLの量が多い家系の人は、平均寿命が7~8年短いという調査報告がありますが、つまり、善玉コレステロールが多いほうが、健康で長生きできるということでしょう。

善玉コレステロールは生活習慣の悪さで減ってしまう

体に中性脂肪の量が多くなると、善玉コレステロールの量が減ります。適度な運動では増加し、運動不足や肥満、喫煙するなど生活習慣があまり良くない人は、善玉コレステロールが減少してしまうのです。

悪玉コレステロールはコレステロールを全身の細胞へ運ぶ

コレステロールは、私たちの細胞をつくる材料となったり、その細胞の中に蓄えられたりします。もともと体内でつくられる脂質で、私たちが生きていくうえで必要な物質です。食事から取り入れられ、肝臓で合成されたコレステロールは、LDL(低比重リポたんぱく)=悪玉コレステロールが全身の細胞へと運びます。これがLDLの大切な働きです。

大切な働きをするのに「悪玉」と呼ばれるのは何故?

血液中にLDLが増えすぎると血管壁にコレステロールが溜まり、動脈硬化を引き起こすことになります。つまり、LDLは、大事なものですが、多すぎると悪玉として問題となるのです。

血液中の脂質の移動

脂肪はそのままでは血液中を移動できない

体内に食事から取り入れられた脂肪は、血液の流れとともに全身の組織へと運ばれていき、脂肪を必要とする細胞まで進んでいきます。ですが、コレステロールや中性脂肪といった脂質は脂なので、そのままの形では水や血液に溶け込めません。もしも脂肪のままの形で血液の中に入り込んだら、血液は拒絶反応を起こします。そこで、コレステロールや中性脂肪は、ほかの力を借りて血液の中を移動するのです。

「アポたんぱく」と「リポたんぱく」

コレステロールや中性脂肪は、仲間のリン脂質や、「アポたんぱく」という特殊なたんぱく質に包まれて運ばれていきます。この「アポたんぱく」は、水にも脂にもなじむ優れた性質を持っています。そして、リン脂質やアポたんぱくで包まれたこの脂質のことを「リポたんぱく」といいます。

「リポたんぱく」となったコレステロールや中性脂肪は、水に溶ける性質になって血液の中に入り込めるようになり、脂質は全身へと運ばれます。

リポたんぱくの種類と働き

リポたんぱくは、その大きさによって、カイロミクロン、超低比重リポたんぱく(VLDL)、中間比重リポたんぱく(IDL)、低比重リポたんぱく(LDL)、高比重リポたんぱく(HDL)の5つに分類されます。それぞれの脂肪組織によって大きさや比重が異なり、体内での働きも異なります。

カイロミクロン

リポたんぱくの中で一番大きく、水の重さを1とすると、0.95未満で水よりも軽く、おもな脂質は中性脂肪が約85%です。食物から吸収した脂質を肝臓へ運ぶ働きがあります。また、コレステロールの合成を調整します。

超低比重リポたんぱく(VLDL)

比較的大きなリポたんぱくで、中性脂肪が約55%です。比重はおよそ0.95~1.00と水に近いです。肝臓で合成された脂質を全身の末梢組織へと運びます。コレステロールを調節しますが、悪玉といわれるコレステロールのひとつです。

中間比重リポたんぱく(IDL)

大きさはVLDLの半分ほどで、水との比重はおよそ1.00~1.02です。脂質は中性脂肪が約40%で、コレステロールが約35%です。全身の末梢組織へコレステロールを運び、代謝を調節します。これも悪玉コレステロールのひとつです。

低比重リポたんぱく(LDL)

水との比重がおよそ1.02~1.06と水よりも重くなっていて、コレステロールが約45%です。血液中に存在し、脂質を全身の末梢組織へ運びます。これは悪玉コレステロールの代表で、動脈硬化などの危険因子です。

高比重リポたんぱく(HDL)

約50%がリン脂質で、比重はおよそ1.06~1.21と一番重いリポたんぱくです。全身の末梢組織から余分なコレステロールを取り、肝臓へ運ぶ働きをします。これは脂分が少なく、善玉コレステロールといいます。

中性脂肪は血液中の脂質のひとつ

血液の成分について

自分の体内にどれくらいの血液があるか知っているでしょうか?人の体の中にある血液の量は、その人の体重の13分の1の量、だいたい8パーセントくらいだといわれています。例えば、体重が50キログラムの人ならば4リットルくらいの血液があります。

血液は、血漿(けっしょう)という液体成分と、赤血球、白血球、血小板という有形細胞成分でできています。血漿のほとんどは水分で、ほかに、たんぱく質や脂質、糖質、ミネラル、ホルモン、ビタミンなどで構成されています。そして、その中のひとつである脂質には、さらに4つの種類の脂質が含まれています。それは、次に挙げるコレステロール、リン脂質、中性脂肪(トリグリセライド)、遊離脂肪酸です。

コレステロール

コレステロールは、人間の体を作っている細胞の、細胞膜を形成する物質です。ほとんどが肝臓で合成されるのですが、副腎皮質ホルモンや胆汁酸の材料でもあります。不足した場合に免疫力の低下を招いたり、脳出血の危険を増します。

リン脂質

リン脂質は、コレステロールと同じく細胞膜の構成成分です。脂肪が体内でエネルギーとして使われたり蓄えられたりする時に、たんぱく質と結びついて血液中を移動します。水に溶けない性質をもつ物質を水になじませる働きをします。

中性脂肪

中性脂肪は、体脂肪の大部分を占める物質で、とりすぎると肥満を招きますが、肝臓や脂肪細胞に蓄えられる重要なエネルギー源でもあります。

遊離脂肪酸

遊離脂肪酸は、肝臓や脂肪細胞内に蓄えられた中性脂肪が酵素によって分解され、血液中に放出されたものをいいます。血液中を運ばれて、エネルギーとして利用されます。